二次創作を楽しんでいる方やこれからはじめたい方にとって、著作権法の理解は欠かせない要素の1つです。著作権の理解が浅いまま、二次創作を行うとトラブルにつながる可能性があります。
本記事では、二次創作に関する著作権法上の規制や許可を得る必要がないケースをご紹介します。また、よくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
著作権とは?
著作権は、創造された作品を守るための大切な権利であり、著作者の利益と努力を保護しています。著作物を無断で複製したり、公に利用したりするには著作者の許可が必要とされ、これは作品が他者によって勝手に利用されるのを防ぐためです。
たとえば、文芸や音楽、美術などの創作的な表現が著作権によって保護される対象です。このような保護は社会全体の創作意欲を高め、文化の発展を促進する役割も担っています。
二次創作に関する著作権法上の規制は3つ
次は、二次創作に関する著作権法上の規制について解説します。
- 同一性保持権
- 公衆送信権
- 翻案権
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.同一性保持権
同一性保持権は、著作者人格権のひとつとして認められており、自身の作品が無断で改変されるのを防ぐ権利です。この権利により、著作物が意図に反する形で改変されるのを防ぎ、作品の独自性が守られます。
原作の意図を変えるような二次創作が行われた場合、この権利の侵害となる可能性があり、著作権法上でも問題視されます。同一性保持権は他者に譲渡できない著作者に与えられる独自の権利です。
参考:同一性保持権 (第20条第1項) | 公益社団法人著作権情報センター
2.公衆送信権
公衆送信権は、インターネットを通じて自身の著作物を配信する独占的な権利です。この権利は、翻案権などと同様に著作権の一部を構成しています。さらに、著作権者は二次創作物の配信に関する権利も持ち、二次創作物が許可されている場合でも、ネット上で配信する際には別途承諾が必要です。
このように、二次創作物を無断でインターネットに公開すると、公衆送信権の侵害に該当する可能性があるため注意しなければなりません。
参考:公衆送信権・公の伝達権(第23条)|公益社団法人著作権情報センター
3.翻案権
二次創作は、著作権法において、他者の著作物をもとに新たな表現を加える「翻案」という行為に該当します。翻案権は、原著作物の本質的な特徴が第三者に明確に認識される形での改変を制限する権利で、著作権の一部として保護されています。
このため、著作物を他者に無断で翻案して公開すると、たとえ非営利であっても著作権侵害となりかねません。翻案には、著作権者の承諾が不可欠で、例外は一定条件を満たす場合のみ認められます。
参考:翻訳権・翻案権など(第27条)|公益社団法人著作権情報センター
二次創作で著作権者の許可を得る必要がないケースは3つ
次は、二次創作で著作権者の許可を得る必要がないケースについて解説します。
- 私的使用
- 視覚障害者のための音声化・点字化
- 聴覚障害者のための音声著作物のテキスト化
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.私的使用
著作権法は、個人や家族内など限られた範囲であれば、著作物の二次創作を著作権者の許可なく行う場合は認めています。この「私的使用」は、家庭内やごく近しい関係内での利用に限られており、広範な共有や公開は含まれません。
このため、友人同士でのシェアや会社内での使用が含まれる場合には、私的使用の範囲を超えるため、著作権者の承諾が必要です。
2.視覚障害者のための音声化・点字化
視覚障害者が著作物を利用しやすくするため、特定の福祉団体などが行う二次創作については、著作権者の許可を得る必要はありません。これは著作権法で定められており(著作権法37条3項、47条の6第1項第4号)、視覚障害者支援の一環としての改変が対象です。
たとえば、書籍や字幕を音声に変換したり、点字で表現したりするなど、視覚障害者向けの形式への改変は認められています。このように、著作権法は福祉目的の利用を特別に保護しています。
3.聴覚障害者のための音声著作物のテキスト化
聴覚障害者が著作物をより理解できるよう支援する目的で、特定の福祉事業者が二次創作を行う際には、著作権者の許可は不要です(著作権法37条の2第1項、47条の6第1項第5号)。具体的には、音声で提供される内容をテキスト化すると、聴覚障害者にも情報が伝わりやすくなります。
このような改変は福祉目的として認められ、著作権法上特別な扱いを受けています。
無許可で二次創作した場合の法的責任
次は、無許可で二次創作した場合の法的責任について解説します。
- 著作権侵害・著作者人格権侵害
- 差止請求・損害賠償請求
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
著作権侵害・著作者人格権侵害
著作権者の許可を得ずに二次創作を行うと、著作権侵害や著作者人格権の侵害とみなされ、刑事罰が科される可能性が高いです。著作権侵害としての翻案権違反には、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、あるいは両方が適用されます(著作権法119条1項)。
また、同一性保持権の侵害も含まれる場合、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科される可能性があります。これらの罪は親告罪であり、著作権者や著作者からの告訴が刑事訴追の条件です。
差止請求・損害賠償請求
著作権者や著作者は、無断で二次創作された場合、作品の公表停止や発行差止めを求める権利があります(著作権法112条1項)。また、二次創作によって経済的な損失が生じた場合、著作権者や著作者は侵害者に対して損害賠償の請求が可能です(民法709条)。
著作権法114条では、損害額を推定する規定が設けられており、著作権者側が被った損害を立証する負担が軽減されています。このように、違法な二次創作に対する救済手段が法的に定められています。
二次創作をする際に注意したいポイントは5つ
次は、二次創作をする際に注意したいポイントについて解説します。
- 公式のガイドラインを確認する
- 原作のトレースやコピペをしない
- 「公式のものである」と誤認される行為は避ける
- 営利目的で行わない
- 肖像権の侵害に注意する
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.公式のガイドラインを確認する
二次創作を合法的に楽しむためには、著作権者の許可範囲を確認しましょう。多くの作品では、公式なガイドラインや使用規約が示されており、二次創作が許可される場合もあります。さらに、特定の条件や制限が設けられている場合も少なくありません。
たとえば、内容に制約がある場合や特定のテーマが禁止される場合があります。違法行為を避けるためにも、作品の公式サイトやガイドラインを確認して、示されたルールに沿って制作しましょう。
2.原作のトレースやコピペをしない
原作の画像やテキストをそのままトレースしたり、コピー&ペーストしたりするのは避けましょう。こうした行為は著作権の複製権を侵害する可能性が高く、さらに「公式に許可されたもの」と誤解されるリスクもあります。
このような誤認を招く行為は、著作権者からの訴訟リスクを高めてしまうため、注意が必要です。創作においてはオリジナルの表現を心がけ、適切な範囲で楽しむようにしましょう。
3.「公式のものである」と誤認される行為は避ける
同人グッズを制作する際は、公式の商品と混同されないよう独自性を明確に保たなければなりません。公式ロゴやデザインの使用やコピーは避け、誤認を防ぐために独自の表現を心がけましょう。
公式と誤解されると著作権侵害とみなされるリスクがあり、頒布停止や法的措置を受けるケースも報告されています。安全に楽しむためにも、オリジナリティを大切にして、公式との線引きを意識した創作をしましょう。
4.営利目的で行わない
二次創作の同人誌活動は、著作物の権利を持つ他者の作品をもとにした創作であると理解して、営利目的ではなく趣味として楽しみましょう。部数や販売価格によっては利益が出る場合もありますが、過剰な収益を得ようとする行為は「他人の著作物で利益を得ている」と捉えられるリスクが伴います。
このため、同人活動の枠を守り、創作を通じて楽しみや交流を大切にしなければなりません。
5.肖像権の侵害に注意する
作品の制作や販売において、著作権だけでなく肖像権やパブリシティ権も十分に考慮する必要があります。実在の人物や芸能人をモデルとしたグッズ制作では注意が求められます。
肖像権は、個人の顔や姿を無断で使用されないための権利であり、パブリシティ権は経済的な価値を守るための権利です。無断でグッズ制作すると、権利の侵害にあたる可能性があり、法的措置を受けるリスクがあるため、慎重に取り扱いましょう。
二次創作 著作権でよくある3つの質問
最後に、二次創作 著作権でよくある質問をご紹介します。
- 質問1.著作権者が告訴しない理由は?
- 質問2.リスクがない創作活動の楽しみ方は?
- 質問3.著作権と肖像権の違いは?
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
質問1.著作権者が告訴しない理由は?
著作権者が告訴しない理由としては、以下があげられます。
- ファンコミュニティ内で暗黙のルールが存在し、二次創作が表立って報告されない
- 告訴には費用や時間がかかるため、著作権者が手間をかけない
- 二次創作が原作の認知度向上やファン層拡大に寄与する点から、理解を示す著作権者もいる
しかし、二次創作が著作権侵害に該当する可能性は高く、あくまでも著作権者の判断に委ねられています。
質問2.リスクがない創作活動の楽しみ方は?
作品によっては、二次創作の同人グッズが許可されている場合もありますが、すべてが認められているわけではありません。製作会社が二次創作グッズの受注を受け付けていない場合や、著作権者が二次創作に対して明確な立場を示していない場合、突然訴えられるリスクがないとはいえません。
このため、リスクを回避しながら安心して創作を楽しみたい場合は、オリジナルデザインの同人グッズ制作がおすすめです。
なお、おしゃれで安いオリジナルグッズ制作サイトについては、こちらの記事で解説しています。
関連記事:【小ロットも対応可能】おしゃれで安い!おすすめのオリジナルグッズ制作サイト10選
質問3.著作権と肖像権の違いは?
キャラクターではなく、実在の有名人の画像なら使用しても問題ないと考える方もいますが、実際には注意が必要です。人物には著作権はありませんが、肖像権という権利が存在しており、自分の姿が無断で使用されないよう保護されています。
有名人は、その容姿に経済的価値があるため、無断使用はパブリシティ権の侵害にもなりかねません。日本では肖像権に関する法整備はありませんが、無断使用がプライバシー権の侵害とみなされ、民事での損害賠償請求が発生する場合もあります。
まとめ
本記事では、二次創作に関する著作権法上の規制や許可を得る必要がないケースをご紹介しました。
著作権は、創造された作品を守るための大切な権利であり、作品が他者によって勝手に利用されるのを防ぐ目的があります。二次創作における主な著作権法上の規制として、「同一性保持権」「公衆送信」「権利」「翻訳案権」があげられ、これらの権利に反する場合には著作権者の許可が必要です。
安全に創作活動を楽しみたい場合は、公式ガイドラインを確認し、原作のトレースや営利目的の回避、肖像権の侵害に注意が必要です。さらに、原作のトレースやコピペの禁止、公式のものと誤解されない表現を心がけましょう。
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