ウェブサイトやポスター、商品パッケージなど、さまざまな場所で「目を引く」デザインが求められています。どのような色を選ぶと、魅力的な配色になるのか悩む方も多いでしょう。
この記事では、目を引く色の選び方や、組み合わせを決めるコツを解説します。ポイントを押さえて色の特性を理解し、ぜひデザインに活かしてみてください。
目を引く色の選び方は4つ
色彩を駆使したデザインは、単に明るく派手な色を組み合わせるだけでは魅力的な配色にはなりません。配色のポイントになるのは「色相」、「明度」、「彩度」という3つの要素です。
これらの要素に注目することで、色が持つ印象や見え方が大きく変わります。それぞれの要素を理解し、効果的に目立つ色を選びましょう。
1.補色や類似色を使用する
色相とは、赤や青、緑といった異なる色の性質を指し、これらは赤から橙、黄、緑、青、藍、紫と連続して変化します。この色の順序を円形に配置したものが色相環です。
色相環において、ある色に近い色を類似色と呼び、たとえば赤に近い黄色やピンクがこれに該当します。一方、色相環で対立の位置にある色を補色(反対色)と言い、使用することで互いの色を際立たせることができます。
補色は色の対比を強調し、類似色はデザインに一体感を与えます。
2.明度に差をつける
明度は色の明るさを示し、同じ色相であっても高低により色の表情が大きく変わります。たとえば、赤色であれば、明度が高いと鮮やかな印象に、低いと暗く深みのある色合いになります。
明暗の対比は色味だけでなく、視覚的な印象を際立たせる重要な要素です。すべての色の明度を同じにすると、色同士が溶け合ってデザインがぼやけてしまうため、同系色を用いるデザインでは、明度の違いを意識的に設定するとよいでしょう。
3.彩度に差をつける
彩度は色の鮮やかさを表す指標で、高い彩度は色が原色に近く、ビビッドな状態を示します。対照的に、彩度が低いと白や黒が混ざり、色がくすんで落ち着いた印象になります。
極端に彩度が低い場合、色は有彩色から無彩色に変わります。
彩度の違いは色の認識に大きな影響を与え、同一色相でも全く異なる印象を生み出すことができます。ただし、彩度の選択を誤ると不鮮明さや汚れたような印象を与えるリスクもあるため注意が必要です。
4.ハレーションに気をつける
ハレーションとは、彩度の高い補色を使用した際に、明度差が小さいことで目がチカチカして不快な印象を与える現象です。WEB広告などでインパクトを狙う場合に採用されることもありますが、視覚的なストレスを引き起こしやすいため、基本的には避けることを推奨します。
ハレーションが生じた場合、鮮やかな色の間に黒や白などの無彩色を挟むと色の衝突を和らげ、情報を明瞭に伝えるデザインを実現できます。
色による3つの特性
デザインにおいて文字やロゴを効果的に活用する際、目立つ色が必ずしも読みやすさを保証するわけではありません。目的に応じて最適な配色を選択することが重要です。
- 誘目性
- 視認性
- 可読性
項目ごとに詳しくみていきましょう。
特性1.誘目性
誘目性とは、自然と視線を引きつける能力を指し、デザインにおいて極めて重要です。
たとえば、道路標識では白や黒、グレーの背景に対して、赤や黄色などの暖色系を文字色に使用することで、高い誘目性を実現します。これにより、情報が明確に目立ち、効果的な警告や指示を伝えられるのです。
一方で、青や紫、緑などの寒色系を使用すると誘目性が低下し、落ち着いた印象のデザインを作り出せます。誘目性は、目的に応じた配色選びにおいて不可欠です。
特性2.視認性
視認性とは、文字やデザインが一目で理解しやすい状態を保つ特性を指します。視認性の高さは、文字の周りに使用される色によって大きく左右されます。
たとえば、黄色の背景に黒文字や赤の背景に白文字のような有彩色と無彩色の明確な対比は、視認性を高める効果的な配色です。これにより、情報が直ちに目に入り、読み取りやすくなります。
適切な色の組み合わせによって、デザインの機能性を最大限に引き出すことが可能です。
特性3.可読性
可読性とは、文字の内容をひと目で理解しやすい度合いを示す用語で、視認性と共にデザインの重要な要素です。視認性が文字やデザインが目に入りやすいことを保証する一方で、可読性はその内容が読み取りやすいかに焦点を当てます。
明度差や色相差が大きい配色は可読性を向上させますが、補色の組み合わせはハレーションを引き起こし、逆効果になることもあります。この問題を避けるために、文字周辺に白い枠を加えるなど、無彩色を利用して色同士の境界を明確にする工夫が可読性を高める方法として効果的です。
目を引く色の組み合わせを決めるコツ
続いて、目を引く色の組み合わせを決めるコツを紹介します。主に次の4つが挙げられます。
- 周囲の環境に合わせる
- 色のイメージと内容を合わせる
- 色の強弱をつける
- ターゲットが好む色を取り入れる
項目ごとに詳しくみていきましょう。
1.周囲の環境に合わせる
目を引く色の選び方では、周囲の環境に合わせることが大切です。昼間の明るい場所と夜間の暗い場所では、色の見え方が異なるためです。
昼・明るい場所
昼間や明るい環境でのデザインでは、赤、オレンジ、黄色、黒、青といった明確で鮮やかな色が特に目を引くとされます。背景を暗い色、たとえば黒や緑に設定し、それに対して明るい色を文字色として用いることで、視認性が高まります。
しかし、赤やオレンジ、黄色といった暖色系を多用すると、明るい外光の下では背景に溶け込んでしまいがちです。そのため、色のバランスに注意し、デザインが周囲の環境に馴染みすぎず、しっかりと目立つよう配慮することが重要です。
夜・暗い場所
夜間や暗い環境では、赤やオレンジのような暖色系が引き続き目を引く色として機能します。昼間には背景に溶け込むことが多い黄色や黄緑も、暗い場所では目立つ色合いに変わります。
しかし、昼間は視認性が高い黒や濃い青は夜間では周囲の暗さに溶け込みがちであるため、これらの色の使用には注意が必要です。明暗の対比を駆使して、情報の伝達効率と視認性を最大化させる配色を選びましょう。
2.色のイメージと内容を合わせる
色はそれぞれにイメージや印象を持ち、デザインにおいて非常に重要です。適切な色の選択は、ターゲットの注目を引き、メッセージを際立たせる効果的な手段となります。
デザインのテーマやメッセージに合った色を選び、より魅力的で目を引く配色をデザインしましょう。たとえば、エネルギッシュで活動的な内容には赤やオレンジが適しており、落ち着いた信頼感を求める場合は青や緑が理想的です。
色選びには、その色が一般的に持つ感情的な響きを考慮し、目的に応じた印象を創出することがポイントになります。
色 | イメージ |
赤 | 情熱、エネルギッシュ |
青 | 知性、クール |
黄 | 明るい、陽気 |
緑 | 自然、安らぎ |
3.色の強弱をつける
情報の重要度に応じて色の強弱をつけるのも効果的です。特に重要な点や注意してほしい内容は、目立つ色で強調し、情報の優先順位を明確にするとよいでしょう。
また、視認性を高めるために文字の大きさやバランスにも工夫が必要です。遠くからでも内容が一目で理解できるよう配慮しましょう。
ただし、多くの色を使いすぎるとどの情報を優先して受け取るべきか混乱するため、色数は3色程度に抑えるのがおすすめです。
4.ターゲットが好む色を取り入れる
特定のターゲット層に訴求する際は、ターゲットが好む色を積極的に使用すると効果的です。たとえば、子供向けの商品やサービスでは鮮やかで明るい色が好まれることが多く、大人向けでは落ち着いた色や洗練されたトーンが選ばれやすいです。
ターゲットの好みを理解し、ブランディングに活かすことで、視覚的な魅力を最大限に引き出せます。また、企業や店舗のイメージカラーをうまく取り入れることで、一貫性のあるブランドイメージを築くことも可能です。
目を引く色でよくある3つの質問
最後に、目を引く色でよくある質問にお答えします。
- 質問1.目を引く色ばかり使えば目立つ?
- 質問2.目を引く色は読みやすい?
- 質問3.色選びが重要な理由は?
それぞれ詳しくみていきましょう。
質問1.目を引く色ばかり使えば目立つ?
すべてが鮮やかな色で構成されていると、個々の色が互いに競合してしまい、逆に何も際立たなくなる可能性があります。目立つ色を効果的に使用するには、コントラストが重要です。
たとえば、白背景に黒い文字はとても目立ちます。これは最も基本的な「明るい色と暗い色のコントラスト」を利用した例です。色彩が相互に引き立て合うように配置することで、目的の情報を際立たせることができるのです。
色の使用はバランスが重要であり、目立たせたい要素には対照的な色を用いることで、より効果的に視覚的な注目を集められます。
質問2.目を引く色は読みやすい?
目を引く色が必ずしも読みやすいとは限りません。目を引く色は、そもそも「注目を集めること」を目的としているためです。
目を引く色と読みやすい色は、用途に応じて使い分ける必要があります。
ただし、目を引く色でも、背景色との対比が適切であれば読みやすくなります。たとえば、赤字を黒背景に使えば読みやすくなります。目を引く色を効果的に使うには、背景色の選定が重要です。
質問3.色選びが重要な理由は?
人は、色を通じて特定のイメージや感情を連想させ、思考に深く影響を及ぼします。そのため、使用する色によって、心に残る印象が大きく変わるのです。
これは、製品やサービスのブランディング、広告、インテリアデザインなど、あらゆる視覚的コミュニケーションにおいて、色選びが非常に重要である理由です。
まとめ
目を引く色は、単に「鮮やかな色を使えばいい」というわけではありません。色の特性を理解し、周囲の環境や目的に応じて適切に組み合わせることが重要です。
この記事を参考に、色相、明度、彩度、そして色ごとに連想されるイメージを効果的に活用し、理想の配色を見つけ出す手助けになれば幸いです。