マグネットには、異方性と等方性があります。目的に応じて使い分けされますが、どのような特徴をもっているのか理解している人は少ないでしょう。
この記事では、異方性マグネットと等方性マグネットの特徴や違い、主な用途まで解説します。マグネットシートの活用を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
マグネットシートの特徴
マグネットシートには、大きく分けて「異方性マグネット」と「等方性マグネット」の2種類があります。両者の特性を理解し、用途に応じて適切なマグネットを選ぶことが重要です。
- 異方性マグネット
- 等方性マグネット
それぞれ詳しくみていきましょう。
異方性マグネット
異方性マグネットは、一定の方向に強い磁力が発生する特徴を持っています。これは、製造過程でマグネット粒子のS極とN極を整列させるからです。
たとえば、厚さ1mmの異方性マグネットシートの場合、吸着面に対して垂直な方向に約100g/cm²の吸着力を持つと言われています。等方性マグネットと比較すると約4倍の力です。
ただし、磁力が一方向に集中するため、取り扱いに注意が必要です。磁気カードなどに近づけると、磁石の影響を強く受けてデータが消去する可能性があります。
等方性マグネット
等方性マグネットは、全方向に磁力が均等に分布しているのが特徴です。ランダムな磁力分布により、どの角度から接近しても安定した吸着力を発揮することが可能になります。
また、等方性マグネットは、ランダムな磁化方向を持つ結晶が磁石粒子の中に含まれます。そのため、成形時に外部から磁場を加えても磁化方向が揃わず、異方性マグネットにすることはできません。
異方性と等方性の違い
異方性マグネットと等方性マグネットは具体的にどのような違いがあるのでしょうか。「磁力」「厚みやサイズ」「主な用途」から、項目ごとに詳しくみていきましょう。
磁力
異方性と等方性のマグネットでは、磁力に明確な違いがあります。
異方性マグネットは、特定の方向に磁力を集中させる特性を持っています。これは、製造過程で磁場をかけ、一定の方向に磁気を整列させます。その結果、非常に強い吸着力があります。
一方、等方性マグネットは全方向に均等な磁力を持つのが特徴です。これにより、どの方向からも一定の吸着力が得られます。
厚みやサイズ
マグネットシートにはさまざまな厚みやサイズがあり、異方性や等方性によって決まっているわけではありません。
サイズが小さいと接地面積が少なくなり、結果として剥がれやすくなることがあります。逆に、サイズが大きい場合は磁石の重量自体が増え、それが原因で剥がれるリスクが高まります。
また、一般的に厚いほど磁力は強くなりますが、コストと磁力のバランスを考慮すると、厚さ1mm以下のマグネットシートが多く使用されています。
なお、マグネットシートの厚みやサイズは用途に合わせて選ぶべき要素であり、その選択が製品の機能性やコストパフォーマンスに直結します。
主な用途
異方性マグネットと等方性マグネット、それぞれの主な用途を紹介します。
異方性の場合
異方性マグネットは、磁力が特定の方向に集中して強い特性があります。この高い吸着力は、電子機器や工業製品の製造で特に活用され、重い物体の固定やさまざまな部品の結合に欠かせない役割を果たしています。
また、0.8mm厚の異方性マグネットシートは車に貼り付けるマグネットシートとしても人気です。
等方性の場合
等方性マグネットは、ランダムに均一な磁力を持つ特性があります。
0.6mm厚の等方性磁石を使用したマグネットシートは、車の初心者マークやシルバーマークによく用いられます。また、0.4〜0.6mm厚のマグネットシートは、郵便ポストに投函されやすい水道屋や工務店のノベルティとしても人気です。
異方性マグネットでよくある3つの質問
最後に、異方性マグネットでよくある質問にお答えします。
- 質問1.異方性マグネットの方が吸着性が高いからおすすめ?
- 質問2.異方性マグネットを取り扱う際の注意点は?
- 質問3.マグネットシートはどこで購入できる?
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
質問1.異方性マグネットの方が吸着性が高いからおすすめ?
異方性マグネットシートの高い吸着力は魅力的に感じますが、どんなときでもおすすめというわけではありません。使用するシーンや目的によっては、等方性マグネットシートが適していることもあります。
異方性・等方性のどちらが優れているというわけではなく、その特性を理解し、求める機能や条件に最も合致するタイプを選ぶことが重要です。
質問2.異方性マグネットを取り扱う際の注意点は?
異方性マグネットを取り扱う際の注意点は、等方性マグネットと基本的に違いはありません。
屋外や高温多湿の環境下では、マグネットの性能に影響を与えて、マグネットシートが変形したり、剥がれたりするリスクがあります。
また、車のボディにマグネットシートを使用する場合は、ブロッキングという現象に注意が必要です。これは、マグネットシートが強く車体に固定されすぎて、塗装面に損傷を与えたり、磁石の痕跡を残したりすることを指します。
この問題を防ぐには、マグネットシートを長期間同じ場所に放置しないことが大切です。特に高温になりがちな夏期には、2〜3日ごとにシートの位置を変えることをおすすめします。
また、貼り替える際は、マグネット面と接着面を清潔に保ち、平らで滑らかな部分に貼り付けるのが重要です。車内が高温になることも考慮し、マグネットシートを車内に放置しないようにしましょう。
さらに、パソコンや磁気カードなど、磁気の影響を受けやすいアイテムからはマグネットシートを離して保管することで、磁気障害を避けることができます。これらのガイドラインに従って、異方性マグネットシートを安全かつ効果的に使用しましょう。
質問3.マグネットシートはどこで購入できる?
異方性マグネットシートは、主にオンラインショップやマグネット専門店で販売されています。また、一部のホームセンターや工具店でも取り扱っているケースもあります。
等方性マグネットシートはより入手しやすく、100円ショップやスーパー、雑貨店、ホームセンターなどで広く取り扱われています。
オンラインでの購入は、商品の種類が豊富で、必要な情報を比較しやすいメリットがあり、実店舗での購入では商品を直接見て判断できる点がメリットといえるでしょう。
まとめ
異方性マグネットは等方性マグネットよりも強い磁力があります。一方で、等方性マグネットシートは、つけはずしのしやすさや身近な店舗で手に入りやすいのがメリットです。
どのタイプのマグネットシートを購入するかは、使用目的によって大きく左右されます。
もし、市販品で希望するものがない場合は、インターネット上の専門店を利用してオリジナルのマグネットシートを作成することも可能です。